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2008.10.13

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導入事例

金型製造業でのエンタープライズ・プロジェクトマネジメント導入事例



プロジェクト別の予算・進捗管理で企業全体収益の向上を目指す


 日本の自動車部品金型製造メーカーは、技術力は世界一といわれているものの、 年々強まる自動車メーカーのコスト削減要求や他メーカーとの競争激化のため、採算 確保に苦しんでいる。海外の独立系メーカーにいたっては軒並み撤退を余儀なくされ ている状況となっており、このように厳しい環境下では、少しでも採算性の高いプロ ジェクトを受注すること、また、受注したプロジェクトを予算内で確実に完了させる ことが企業存続のためにも必要不可欠となる。
 本事例の企業においては、企業全体の予算を達成するために無理な受注をしたり、 部門全体で赤字プロジェクトの損失部分を他のプロジェクトから補填したりしていた ため、プロジェクト毎の採算性が不明瞭となり、行なうべきプロジェクトであるか否かの 判断をすることができなかった。
 ここでは、プロジェクトマネジメントシステム(仕組み)を導入することで、 これまで部門/年度別しか行えなかった予算管理がプロジェクト別かつ ライフサイクル全体で実現できるようになるまでの経緯と取り組みの内容について紹介する。

導入背景


 当該企業は、部品の金型設計・製作だけに留ま らず、金型を使って鋼板を加工するボディー生産 も受託するという、大きな利益を生み出す可能性 の高い「生産コンサルティング」事業も柱にしよ うとしていた。この事業は長い目で見れば、企業 に着実に利益をもたらすであろうと認識されてい たものの、自動車メーカーの完成車工場近くにプ レス工場などを建設する必要があり、膨大な初期 投資も必要であった。
 しかし自動車メーカーのコ スト削減要求は厳しさを増すばかりで、海外で通 用する技術を持ち、かつ多くのプロジェクトを抱 えていたにもかかわらず、利益は圧縮傾向となり 導入背景膨大な投資資金を捻出することが簡単ではなくな っていた。資金調達力、財務体質の強化を達成す るためには、経営の透明化と収益性を向上させる ことが急務であり、それにはプロジェクト状況を 可視化することが可能で、かつタイムリーな状況 判断を可能とするマネジメントツールの適用が有 効ではないかという判断が下された。

導入前の課題


 とにかく資金調達力をつけ、財務体質の強化を しなければならなかった。そのための当面の解決 必須な課題として、以下3項目が挙げられていた。
1. 経営の透明化
 技術力が世界中で評価されていたこともあり、 年度予算編成時に企業目標のひとつである売上に ついて、その達成の目処がほぼ立っていることが 普通であった。しかし、企業としての収益は個々 のプロジェクトの収益を合算したものとなるため、 目標収益を達成するためには、プロジェクトをい かに予算内で完了させられるかが重要になる。従 って、プロジェクト単位で常に予定と実績を監視 でき、その結果に基づいて経営的な判断をタイム リーに行なえるようにすること、すなわち経営を 透明化する必要があった。
2. 納期遵守率の向上による収益性の向上
 金型製造企業においては、金型が納品されて初 めて売上が計上される。従って、出荷の遅れは売 上計上の遅れ、結果的にはキャッシュフローの悪 化に繋がり、企業の経営を圧迫する。特に最終工 程である精度向上のための調整作業がいつ完了す るかは熟練者のカンと経験に依存していることが 多いため、その実施状況が出荷に与える影響は計 り知れなかった。
 ただし、調整作業を機械化したり、単純化した りすることは、競争優位性を損なうことになるた め対応は不可能であった。本当に出荷できるタイ ミングはいつなのかをマネジメントサイクルに沿 って適切な頻度で更新し、関係者で共有した上で 更新された納期は必ず遵守することが必要であった。
3. 組織的な問題解決の取り組み
 全ての製造業において共通する問題であるが、 受注してしまったプロジェクトの受注是非について は営業部門と生産部門間で、設計変更に伴う製造 変更や最終図面の出図タイミング遅れに伴う製造 工程の開始延期などの前工程と後工程の引継ぎに 関しては設計部門と製造部門間で必ずといって良 いほど情報の伝達不足などによる組織間のコンフ リクトが発生する。特に下流側工程を担当してい る部門では、上流側の変更が十分に伝えられない ことによって、行った作業は無駄になり、新たな 作業が発生することになるため、モチベーション の低下につながっていた。モチベーションの低下 はさらに品質の低下を引き起こすこともあり、変 更を含めたプロジェクト情報の可視化と共有が必 要であった。

実施内容


 受注製品の短納期開発を行なっている企業では、 常にスピードが重視される環境下で日々の業務を 行なっているため、プロジェクトマネジメントシ ステム(仕組み)導入において、「人の意識を改革 しながら、組織を見直しながら、役割と権限を整 理しながら、マネジメントプロセスフロー整備し ながら」といったような、どちらかというと間違 いはないが悠長な感じがする取り組みは決して最 適な導入方法とは言いがたい。したがって、今回 の導入においては、必要なプロジェクト情報を無 理なく漏れなく把握でき、マネジメントに活用で きるようにすることを最優先の目標としてシステ ム化することに真っ先に取り組んでいる。
1. プロジェクト単位の予算管理
 工数及びコストに対して、金型の各製造工程単 位に概算見積り予算、正式見積り予算、実行予算 を立案し、その各予算と実績の予実比較を月単位 で行えるようにした。さらに、入力された予算は 型レベル、部品レベル、プロジェクトレベルと階 層ごとに集約した結果を分析することも可能とし た。人件費以外のコストも、直接費と間接費に分 けてプロジェクトで管理すべき科目を定義し、粗 利と営業利益の予測がタイムリーに行える仕組み を構築した。
2. プロジェクト日程の可視化
 金型製造工程ごとの日程は月次、出荷について は週次で計画を更新し、関係者間で日程の進捗度 の共有を可能とした。将来の収益予測精度を向上 を狙いとして、売上タイミングが出荷と連動して 変更されるように対応した。
3. 各種情報とのリンク
 プロジェクト受注時の経緯や状況をまとめた議 事録や可視化しにくい金型の品質の向上度及び出 荷予測情報をArtemisシステム上にファイル添付 することにより、重要な決定事項やプロジェクト の詳細状況が必要な時に誰でも簡単に参照可能と なるようにした。
4. 他システムとのインタフェース開発
 二重入力などの負荷を新たに発生させることな く、プロジェクトの必要な全ての情報を1箇所で管 理し、統合データによるアウトプット・分析に集 中できるようにするために、Artemisシステムと 小日程管理システム、購買システム、原価管理シ ステムなどの他システムとデータ連携を行なった。 インタフェースを追加開発することにはなったも のの、Artemisシステムで編成されたプロジェク ト別の予算を部門別予算に変換し、財務会計シス テムへの入力情報とすることによる、予算編成及 び管理の精度向上を狙いとした。
5. 追加帳票の開発
 Artemisシステムにも様々なアウトプットが存 在するが、それに加えて、データマートと呼ばれ る容易にアウトプットの作成や分析が可能なデー タベースが標準で用意されており、それを利用し てEXCEL等のユーザーが使い慣れたソフトウェア に必要データを抽出し、ユーザー独自の切り口の 定義や集計を行ないたいというニーズに対して追 加帳票の開発を行なった。

導入効果


 本システム導入効果は以下のとおりである。
1. プロジェクト単位の予算管理
 プロジェクト単位で、予算と実績の管理を月単 位で比較できることにより、これまでは企業全体 の予算見直し後でなければ不可能であった問題点 の抽出と対応策の検討が月単位で可能になった。 また、月別予算はあくまでも年度予算を按分して 作成していたが、プロジェクト日程と連動させる ことにより、負荷に応じたより精度の高い予算を 立案できるようになった。
2. プロジェクト予算と部門予算の連携
 従来も年度予算は受注プロジェクトや見込みプ ロジェクトを想定して、部門ごとに立案されてき たが、その対象プロジェクトを可視化することに より予算の根拠が明確になった。また、プロジェ クト別予算から部門別予算に展開し、財務会計シ ステムと連携することにより、予算策定の効率化 が可能となった。
3. プロジェクト状況の可視化
 従来であれば、「出荷が遅れた」であるとか「最 終的に予算オーバーした」など結果管理しか行え なかったが、週次/月次で予実管理を行うことに より、日程、コスト、利益という評価軸でプロジ ェクトがどういう状況にあるかを部門を越えて一 望できるようになった。しかも、段階的に詳細な 情報にアクセス可能なシステムであるため、素早 く問題点の抽出をすることができるようになった。

まとめ


 プロジェクト状況の可視化と予算管理の仕組み はできた。今後は、システムから提供される情報 をもとに対応策の検討や管理項目等マネジメント の見直しを継続的に行うことになる。
 さらに、プロジェクト単体でのマネジメントが定 着してきた暁には、どのプロジェクトを戦略的に 受注すべきか、というポートフォリオの仕組みの 検討を進めていくことになるだろう。

プロファイル


 日本有数の自動車用金型メーカー。国内のみな らず海外にも多くの工場を持つ。社員数千名。

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