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株式会社 日立製作所 原子力プラント設計フェーズのプロジェクトマネジメントシステム導入事例   

 10年間で数万点に達する図書をいかにうまく完成させるか 
新設原子力プラントにおいて作成される図書は、顧客提出図書ベースで1プラント
あたり、2~3万冊となり、社内のみで使用する提出不要な図書まで含めた場合、約5
万冊となる。10年間で数万点に達する図書をいかにうまく完成させるかが、
原子力プラントでの設計フェーズでは重要となってくる。
今回紹介するシステム導入事例では、プラントにかかわる所要のデータが得られた
時点で、まずは顧客提出図書を対象に、図書の分類に基づく承認プロセス、上流下流
関係を表す接続条件などから自動的に図書工程を作成するとともに、他システムにて
管理されている図書の提出・返却等の進捗状況を反映し、日々の状況を最新化し可視
化することによってプラント設計フェーズのプロジェクト運営のより一層の合理化と
スピードアップを狙いとして進められた。システムは無事に稼動を開始し、現在では
数百名を超えるユーザーがWeb上で図書作成にかかわる日程情報を即座に確認できる
ところまで拡張され運用されている。
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 導入背景  株式会社日立製作所 日立事業所 原子力事業部は、
昭和20年代に原子力技術の開発に着手して以来、
研究炉、輸出、開発炉そして商用炉とさまざまな
原子力プロジェクトにかかわってきている。プラ
ント新設の場合には、計画設計から、製造、建設、
納入・稼動に至るまで、10年を超える歳月と多く
の人員が費やされ、プロジェクトマネジメントは
必須の要件となっていた。日立製作所では、過去
より製造、建設にとどまらず、設計(図書作成)
フェーズにおいてもプロジェクトマネジメントを
実施してきており、そのためのツールとして、
個々の図書提出期限設定を行なうことが可能なシ
ステムを、経験に基づいた独自のノウハウをロジ
ック化して盛り込み構築し運用が行なわれていた。
 導入前の課題 
2002年当時においても、自社開発の図書提出
期限設定システムは順調に稼動していたが、シス
テム開発当時には適当なプロジェクトマネジメン
ト専用ツールが無かったこともあり、システムは
リレーショナルデータベースを用いて構築され、
1プラントあたりの図書期限設定に数時間を要し
てしまうというパフォーマンス面の課題と、工程
作成ロジックのメンテナンス性に改善の必要があ
るという課題に直面していた。特にパフォーマン
スについては、複数件のプラントの図書を対象と
して夜間の内に処理が完了していることが必要と
されていたにもかかわらず、限界に近い状態とな
っており、課題の解決は待った無しの状況であっ
た。
また、システムからは個々の図書についての
提出期限はわかるものの、図書の作成順、「どの図
書ができていなければ当該図書ができないか」で
あるとか、図書の関連性、「当該図書の完成が遅れ
た場合、どのような図書に影響が及ぶか」につい
ては、確認に時間を要すかまたは確認できないと
いった状況にあり、図書を作成していく上で、上
流側図書が完成していないにもかかわらず、見込
みで下流側図書作成に先行着手してしまうことに
よる手戻りなどを発生させてしまう危険性もはら
んでいた。
 実施内容  今回のソリューションとしては、図書期限付け
処理のパフォーマンス改善、図書工程作成ロジッ
クのメンテナンス性改善、さらには図書工程の可
視化という課題を解決するための現行の図書期限
付けシステムのリプレースが柱となっていたが、
事業企画部情報技術センタという直接のユーザー
ではなく、ユーザーへのサービス提供部門が担当
となっていたこともあり、まず最初に「どのよう
な情報を提供すれば直接のユーザーである、プロ
ジェクトマネージャと設計部門の数百名がメリッ
トを享受できるか」ということについて検討が行
なわれ、結果として以下の内容についても実現を
目指し、今回のシステム構築プロジェクトは開始
された。
1. 図書を作成、修正する作業の明確化
図書の提出期限を計算するだけ
であれば、従来通りの期限付けロ
ジックをプロジェクトマネジメン
ト専用ツールに組み込んでしまえ
ば事は足りたのであるが、それだ
けでは運用が始まった後、図書が
期限通りに完成したか否かの単純
な納期管理となってしまい、完成
していないことがわかった時点で
は既に他の図書への影響が発生してしまっている
という事態をまねいてしまうことが指摘されてい
た。要するに、期限だけの情報では十分に有益な
情報とはならないことが明らかであり、「いつ図書
の作成を開始すべきか」という情報を提供するこ
とが必要であった。
そのため、図書の作成・修正
などを作業工程化し、図書の性質によって分類さ
れる標準的なパターンを作成し、期限付け処理の
結果をパターンごとに展開した工程表として、開
始終了がわかる形で提供することとした。
2. データ入力量を一切増やさない図書の最新作成
状況の可視化(図1)
「いつ開始すべきか」という情報を新たに見え
るようにしたことに伴い、図書作成の最新状況を
表すためには、「作成開始日実績」の情報が必要と
なった。本来であれば、設計部門の図書作成担当
者が入力すべき情報ではあるが、今まで入力を行
なってきていない情報であるため、入力を依頼し
た途端にシステム化による業務量の増加というこ
とがクローズアップされ、ユーザーのシステム利
用に対する抵抗感の発生につながる可能性が考え
られた。その対応として、作成の開始は必ず予定
通りに行なわれているものとして扱い、他システ
ムで管理されている実績日付のみを反映させて、
最新状況を表現することとした。
3. 遅延図書工程調整の自動化(図2)
1件の図書が遅延したからといって、その遅延期
間分プラントの運転開始日を遅らせることは当然
ではあるができない。したがって、遅延が発生し
た場合には遅延が発生している当該図書、および
当該図書のクリティカル・パス上にある複数の後
続図書について、遅延を挽回する処置を講じなけ
ればならない。一般的には、プロジェクトマネー
ジャが短縮可能な図書(工程)を選び出し、期間
の短縮を行なうということになるが、2万冊8万件
の図書作成工程に対してそのような対応を行なう
ことはほとんど不可能と考えられた。
そのためシ
ステムに遅延工程発生に伴う関連する工程の期間
短縮対応を自動的に行なう処理を組み込むことに
した。図書の性質によって対応付けられる標準パ
ターンに基づいて作成される工程の期間を、パタ
ーンごとに設定されている限界値まで自動的に短
縮させていくのである。当該工程が限界値まで短
縮されてしまった場合はその後続工程に対して同
様に短縮させていき、全ての工程が限界値に達し
てしまった場合にはアラームを出すような対応を
行なった。
 導入効果  今回のシステム構築プロジェクトには、必ず解
決しなければならない課題が明確となっていた。まずはその課
題の解決度について見てみる。
1. 1プラントあたりの図書期限設定処理の
パフォーマンス改善
 従 来:3時間/プラント
 構築後:15分/プラント
結果として処理時間が1/12に短縮できたのは、
RDBを用いてデータ検索を行ないながら期限設定
を行なっていた処理をプロジェクトマネジメント
専用ツールに置き換えたことによる影響が大きか
ったといえる。また、このパフォーマンスの改善
によって、従来では情報の更新を行なっても夜間
しか処理できず、その結果は翌日にしか確認でき
なかった状況が、就業時間内でも処理を行い、か
つ結果の確認ができるため、処理後に発生してい
た1日間の待ち時間が縮減された。10年のプロジ
ェクト期間中のたかが1日といってしまえばそれま
でであるが、プロジェクトが進むにつれ、図書の追
加や削除、重要なマイルストーンの日付変更などが
発生し、その都度、図書期限設定を行なうことを考
えると、結果としてかなりの工数削減となっている
ということもできる。
2. 工程作成ロジックのメンテナンス性改善
 従 来:プログラム内に記述され、メンテナンスが困難
 構築後:ロジックメンテナンス機能によっ
て自由にメンテナンスが可能
メンテナンス性改善の解決度としては、非常に
高いということができるが、従来がほとんどメン
テナンス性があるとはいえない状態であったため、
その比較をすることにあまり意味はない。しかし
ながら、ただメンテナンス機能を用意するという
対応を行なうのではなく、ロジックを構成する各
種条件を整理し、その条件ごとに関連する条件を
考慮しながらメンテナンスが可能となるような配
慮を行なっていることからも、ロジックの不整合
などを未然に防止しているということができる。
3. 図書工程の可視化
 従 来:文字情報を記載した帳票
 構築後:工程調整可能なGUI
図書工程をバーチャート化して表示したことに
よって、文字で表されていた時とは比較にならな
いほど図書工程の状況認識度は向上した。さらに、
工程を見たい目的に応じて検索することが可能と
なる検索機能を準備したことによって、ピンポイ
ントで必要な工程を表示し確認することが可能と
なった。
 まとめ  1プラント当たりの図書が2万冊、1図書当たり
の工程が平均4件で1プラント当たり8万件となる
工程と、工程の関連性を示す約20万件のコンスト
レイントという膨大な情報を取り扱うため、個々
の機能を構築するに当たり、常にパフォーマンス
面を考慮することが必要不可欠であったが、プロ
ジェクトマネジメント専用ツールを用いたことで、
なんとか実用に耐えうるパフォーマンスを出すこ
とができたと認識している。また、システムの構
成上、クライアント/サーバーシステムとせざる
を得なかったため、数百名を越える設計者にどの
ような情報を、どのような方法で提供するかとい
う課題が発生したが、今回のシステム構築後の次
のステップとして、プロジェクトマネジメント専
用ツールの情報をWeb上に開示する仕組みを構築
したことで実現されている。
 プロファイル 
株式会社 日立製作所 原子力事業部
- 所在地
エンジニア系:〒317-8511茨城県日立市幸町三
丁目1番1号
営業系:〒101-8010東京都千代田区神田駿河台
四丁目6番地
- 主な事業内容
原子力発電設備の設計・製造
原子力発電設備の予防保全
燃料再処理設備
廃棄物処理設備
核融合装置
医療用加速器システム・放射線応用システム
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