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2008.08.07

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導入事例

システムインテグレーター企業におけるプロジェクトマネジメント教育



実践力のあるプロジェクトマネージャの養成-その動機付けと方法論


 企業や組織で活用される情報システムは、インターネットを始めとする昨今の情報 技術の発達により、ますます高度化・複雑化してきている。その結果、企業が単独で システム導入プロジェクトを請け負うケースは少なくなり、多くの場合、複数のソフ トウェアベンダーと協業し、かつ複数の既存システムとの関係などを考慮しながら目 的のシステムを導入しなければならなくなってきている。すなわち、システム的な観 点からは多岐にわたる知識・技術力が要求される状況になっているのである。 このような状況下では、今までのようにプロジェクトマネージャがすべての技術面で力を発 揮し、プロジェクトを進めていくことはほとんど不可能であり、プロジェクトマネー ジャにはプロジェクトの全体を見渡し、コントロールしていくというマネジメント能 力がより一層要求されることになる。
 本事例の企業では、今までの技術志向の育成だけでなく、マネジメント能力を伸ばす ための育成が必要であると認識されていた。
 ここでは、企業の中に、いかにしてプロジェクトマネージャを育成するための仕組みを 構築していったか、その内容を紹介する。

導入背景


 当該システムインテグレーター(SI)企業にお けるシステムインテグレーション(SI)事業は、 コアとしていた事業の競争激化という環境変化に 対応するための1つの施策として立ち上げられて いた。SI事業をはじめてからの歴史が浅いことも あり、他のSI企業と比べ競争優位性は決して高い ものではなかったが、コア事業との連携による価 値の提供が可能であったため事業としては十分成 り立っていた。しかし、コア事業に依存したビジ ネス形態では、激しい競争環境下でのビジネスと なってしまうだけでなく、ビジネス機会自体を制 導入背景限することになり、SI事業の発展を妨げてしまう 可能性があった。
 そこで、コア事業に依存しない 真のSI事業を展開するためにも、より高度化・複 雑化するシステム導入プロジェクトを成功裡に完 了させるプロジェクトマネジメント能力を身につ けることで、他社との差別化を図っていくという ことが考えられていた。

導入前の課題


 情報技術の昨今の急激な進歩によって、システ ムはより高度化し複雑化しており、企業における システム導入も、その適用範囲は複数部門にまた がり、かつ複数のソフトウェアベンダーを活用し ながら実施されることが大部分となっている。当 該企業を含むSI企業やコンサルティングファーム がこのような体制でシステム導入を行う場合、元 受としてプロジェクトマネージャを務めることが 一般的である。したがって、当該企業のプロジェ クトマネージャも顧客から、もしくはソフトウェ アベンダーからプロジェクトをマネジメントする ことが要求され、期待もされていた。
 ところが、 現実には多くの経験を積んでいるソフトウェアベ ンダーの担当者の方がプロジェクトマネジメント 能力が高い場合があった。そのため、ソフトウェ アベンダーの担当者が事実上プロジェクトマネー ジャとなってしまい、当該ソフトウェアベンダー の都合にプロジェクトが引っ張られてしまって、 プロジェクトが混乱するような状況が発生してい た。そして、このような状況は、当該企業がSIの 立場でなく、ベンダーの立場でプロジェクトのメ ンバーとしてかかわった時にも同じように発生し ていた。すなわち、プロジェクトをマネジメント する能力の高いことが、まだまだ他社との差別化 に有効であることが改めて認識されたのである。
 プロジェクトマネージャがプロジェクトをマネジ メントする能力を高めること、そのための企業と しての仕組み作りが急務となったのである。

実施内容


 ただ単に「プロジェクトをマネジメントする能 力を高める」といっても、漠然としすぎていて何 をして良いのかわからない。考えがちな方向とし て、日本国内もしくは世界で認知されているプロ ジェクトマネジメントの資格を取得するというこ とになってしまう。ところが知識だけを身につけ ても、すぐに実践できるようになるわけではなく、 かといって、知識がなければ、実践できるところ には到底至らないことも事実である。では、具体 的にどのような育成の仕組みを作り上げれば良い のであろうか。
 単純な知識教育だけでは目的を達成することが 難しいことは明らかではあったが、やはり必要な 知識を習得することは必要不可欠であるとの認識 の下、まずはじめに、現状どのようにプロジェク トを実施しているのかその業務手順の分析を行な い、プロジェクトをマネジメントするという観点 で考えた場合にプロジェクトマネージャはどのよ うな行動をとるべきなのか、その行動をとるため にはどのような知識が必要なのかということを明 確にしていった。
■業務手順とプロジェクトマネジメント
 業務手順とは、例えば、「設計」・「施 工」・「テスト」などで表すことが可能な、 実際にシステムを構築していく業務そのもの のことである。このそれぞれの手順に対して、 「立ち上げ」・「計画」・「実行」・「コント ロール」・「終結」といったマネジメントす るためのプロセスが存在している。次に「設 計」業務の「計画」プロセスでは何をどのよ うに計画するのかということを明らかにする ことによって、必要な知識が見えてくること になる。例えば、他のベンダーを選ぶ必要が あれば、「調達」という知識が必要になるとい うことである。プロジェクトマネジメントを 行なう上で必要となる知識については、 PMI(Project Management Institute)発行 のプロジェクトマネジメント知識体系である PMBOK® (Project Management Body of Knowledge)や日本のPMCCが発行するP2M に整理されており、業務手順ごとに必要とな る知識を当てはめていくことによって、実態 に合わせた知識教育のストーリーを組み上げ ていくことができる。
 プロジェクトマネジメント教育を実施する上で、 それを将来、またはすぐにでも業務に生かせるよ うにするために、プロジェクトマネージャ(受講 生)への動機付けにはかなりの注意を払った。プ ロジェクトマネージャの中には自分なりにしっか りやっているとか、今まで教育を受けなくても上 手くやってきたとか、体系的なプロジェクトマネ ジメントは必要ないと考えている人は必ず存在す る。(現実、当該企業のプロジェクトマネージャの 中にも存在していた。)このような場合、「なぜプ ロジェクトマネジメントを行なうのか」といった プロジェクトマネジメントの必要性や、「プロジェ クトマネジメントを行なったことによって、こん な良いことがあった」といった効果を事例などで 示すことによって、動機付けを行なった。

■動機付けのためのプロジェクトマネジメント概論
 プロジェクトマネジメントの基本的な考え 方、より効果的なプロジェクトマネジメント の実践方法や環境整備の仕方、組織的に取り 組むプロジェクトマネジメントの効果などを 簡潔に説明する。これによって上記で挙げた ような人々がプロジェクトマネジメントに前 向きになれば、目的は達したことになる。集 合研修形式で前後半に分け、前半は講義によ ってプロジェクトマネジメントへの抵抗感を 払拭することを目的に、後半はワークショッ プによって担当業務で発生している課題など について、プロジェクトマネジメントの観点 での解決策の導き出しを目的に実施する。研 修後のアンケート調査の結果、通常では、プ ロジェクトマネジメントは有効である、行なう べきであるといった意見に集約されることが 多いが、この研修の成果が実はこれ以降の教育 の成否を左右するといっても過言ではない。
 マネジメント知識が体系立てられ整理され、世界 的なデファクトスタンダードといわれている PMBOK®を採用し実施した。体系立てられた知識 を共有することで、プロジェクトマネージャの力 量に依存しがちな、属人的なプロジェクトマネジ メントから脱却することだけでなく、組織として プロジェクトマネジメントを実践できるようにす ることを目的とした。また、プロジェクトマネジ メント用語についても共有できるようにし、対ベ ンダーや部門間、個人間での認識のずれをなくす ことで、コミュニケーションミスによる問題の発 生を防ぐことも狙いとしていた。

■プロジェクトマネジメント知識体系
 PMBOK®で定義されている9つの知識エリ ア(統合、スコープ、タイム、コスト、品質、 人的資源、コミュニケーション、リスク、調 達)について、入力情報・ツールと技法・出 力情報を中心に解説しながら、実プロジェク トにおける実際の行動とリンクさせて理解を 深めるようにすることが重要となる。 “PMBOKではこのように定義されており、こ れはこういう意味である。実際のプロジェク トにおいては○○○として行動する。”という ように説明をしなければ、ただの受験勉強で 終わってしまう。したがって、トレーナーは プロジェクトの経験が豊富なコンサルタント が担当することが必須となる。
 プロジェクトマネジメントの体系立てられた知 識を理解しても、それを実践に結びつけるために は、プロジェクト実施経験を積むことが必要とな る。もちろん経験を積むための最も良い方法が OJT(On The Job Training)であることは間違 いないが、実プロジェクトでのOJTは時間がかか ったり、目の前の業務に追われてしまって、学ぶ べきことを学べなかったり、学ぶべきプロジェク トマネージャの資質の問題があったりとなかなか 上手くいかない。かといって、この後何もしなけ れば、今度はせっかく得た知識を活用する前に忘 れてしまうということにもなりかねない。該当企 業においては、これらの完全な解決策とはなり得 ないものの、少しでも知識を実際に生かすことを 目的として、プロジェクトマネージャとしてプロ ジェクトマネジメントを疑似体験できるシミュレ ーターを用いて教育を実施した。

■プロジェクトマネジメント・シミュレーター
 Artemis ONTRACK ではプロジェクト計画 立案、プロジェクト実行、コントロールにつ いて疑似体験することができる。あらゆる局 面において発生するプロジェクトの問題やリ スクに対して、プロジェクトマネジメントの 知識を駆使して対応し、納期・コスト・品 質・モチベーションの4つの指標をモニタリン グしながら、プロジェクトをマネジメントし ていけるというものである。もちろんやり方 によって、プロジェクトは成功もするし、失 敗もする。実際に複数のチームで同時に行な っても、ひとつとして同じ結果にはならない。 また、Artemis ONTRACKを使用し、プロジ ェクトマネジメントを疑似体験することによ って、自身のプロジェクトマネージャ・スタ イルの特長や欠点を知ることも可能となる。

導入効果


 アンケート結果によれば、「言葉は知っているも のの実際にどういうものかはよく知らなかったが、 今回の研修で理解することができた」、「理論的に は理解しているが実務でどのように活用すればい いかわからなかったが活用方法が理解できた」等 の意見が多く見受けられた。プロジェクトマネジ メントに関する理解不足や誤った理解が是正され たことを示している。
 また、PMI (Project Management Institute)が実施及び認定してい るPMP(Project Management Professional)の 受講にも役立つため、受験者及び合格者も増加し ている。教育効果として、急激にプロジェクトの 納期遵守率が上がったり、品質が向上したり、コ スト超過率が是正されたりといったことには表れ ていないが、受講者が増加の一途を辿っているこ とからも、プロジェクトマネジメント文化が徐々 にではあるが芽生え始めていると言える。

まとめ


 プロジェクトマネジメント教育カリキュラムを 作成する際重要なことは、企業としてどのような プロジェクトマネジメントのスタイル及びプロジ ェクトマネージャ像を目指すのか明確にすること である。目標が明確でなければ、何を教育すべき か、教育を受けた結果どのように成長すべきかが 見えない。そのためにも業務分析(必要であれば 業務改善)を行い、企業として目指すべきプロジ ェクトマネジメントを確立することが重要である。
 また、単発的な教育ではなく、企業として継続運 用させることが望ましい。プロジェクトに携わる すべての社員に教育を受講させることと、常に最 新のプロジェクトマネジメント動向を把握しなが ら、自社に必要なスキルやノウハウを身につける ための教育カリキュラムを新規開発、改善するこ とで、企業にプロジェクトマネジメント文化を根 付かせることが必ずできると確信している。

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