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2008.10.13

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国内大手電機メーカー ITマネジメント導入事例



ITプロジェクトマネジメントとITプロジェクトポートフォリオマネジメントのシームレスな連携を実現


 近年、企業投資のうちITが占める割合がますます増加している。企業戦略実現に向 け新たなビジネスプロセス構築のカギがIT(情報技術)であり、その投資の成否が企 業の浮沈を握っている。
 国内大手電気機器メーカーであるこの企業も例外ではない。ITプロジェクト/投資全 体の価値向上には、全社規模でのITプロジェクトマネジメント(IT-PM)とITプロジ ェクトポートフォリオマネジメント(IT-PjPfM)の構築とそれらのシームレスな連携 が求められる。また、それらを一過性のものとはせず、企業の継続的な活動とするた めの仕組み・体制・インフラの構築が重要である。
 ここでは、この企業のITマネジメント導入の取り組みを紹介する。

導入背景


 この企業は、製品領域別のカンパニー制を敷い ている。カンパニーごとの独立性が非常に強く、 IT投資やプロジェクトもカンパニーごとに行なわ れている。
 その為、コーポレートのIT企画部門は主管範囲 と全社規模の主要プロジェクト以外、どこで、何 が、どのような判断に基づき、どれだけIT投資が 行われているのか殆んどつかめていない状態であ った。カンパニーから上がってくるIT投資額を集 計しその全体額が把握されているとしていたが、 その内容に漏れや不備があるのではないかと密か に感じていた。
 CIOを含め経営トップは、この状態を解決し戦 略から執行まで一貫したITプロジェクト/投資の 「仕組み」構築の必要性を強く認識していた。

導入前の課題


 この企業は導入前、次のような課題に直面して いた。
1. IT投資/プロジェクトの重複が慢性化している
 コーポレート全体で投資の可否が精査されるべ きであるが、この企業では必要な投資/プロジェク ト情報が集約されていなかった。その結果、カン パニー間で似たようなSCMプロジェクトや明らか に重複しているIT投資が行われてしまっていた。
2. 投資対効果や企業戦略との整合性を十分考慮 せずにIT投資/プロジェクトが行なわれている
 各カンパニーが場当たり的に、または、信憑性 に欠ける独自の評価基準で、投資/プロジェクトの 開始・継続が決定されていた。
 コーポレート全体の視点で、企業戦略実現を促 し、投資対効果が見込めるIT投資/プロジェクトを 選別し、そして、メリハリのある資源配分を行う ための仕組みが必要とされていた。
3. ITプロジェクトが上手く実施されていない
 この企業では、IT-PMにも問題があった。
 まず、プロジェクトマネージャ間の質に大きな 差があり、プロジェクトマネージャ教育が危急の 課題と認識されていた。これに関しては、トレー ニングを行うなど既に手を打ちつつある。
 だが、問題はプロジェクトマネージャ個人だけ ではなく、彼らを支える組織や体制にもあった。 コーポレート或いは各カンパニーのIT企画部門が 本来実施・支援すべき業務が行われておらず、ま た、そもそも定義されていなかった。
 また、プロジェクト進捗情報の管理は、カンパ ニーや個別プロジェクトに任され、Excelや独自に PMIS (Project Management Information System)を導入していた。だが、過度に詳細なデ ータが集められインプットに多くの手間がかかる ものであり、また、その効果が疑問であったため、 放置されかけていた。

実施内容


 以上のような課題を認識した上で、この企業は ITマネジメントの課題解決に向けた具体的な検討 を開始した(図1)。目指すは、IT-PjPfMとIT-PM の構築とそれらのシームレスな連携である(図2)。 具体的には、次のような改革を行った。
1. プロジェクト/投資の全体把握
 IT-PjPfMの第一歩として、ITプロジェクト/投資 の必要情報を一元化し、その全体を可視化するこ とが求められる。
 まず、この企業ではITマネジメントの対象とな る全ITプロジェクト/投資を洗い出し、それらの階 層を合わせることから始めた。そして、共通のフ ォーマットで、属性情報(主管組織、PJコードな ど)、セグメント情報(投資領域など)、プロジェ クト評価情報、プロジェクト進捗データを各カン パニーのIT企画部門から集めることとした(図3)。

 継続的に運用されるためには、「如何に収集すべ き必要情報をシンプルにするか」、「如何にデータ 入力の人的手間を省くか」がポイントとなる。例 えば、スケジュールについては現場レベルの細か いタスクではなくシンプルにマイルストンで管理 する等である。
 この企業ではPjPfMシステムとしてArtemis 7 を採用した。コスト実績など、既に他システム (ERP等)にあるものは、インターフェース処理 (追加開発)により自動入力されるようにした。結 果、Artemis7のアクセス権限さえあれば、一元化 されたITプロジェクト/投資情報を、いつでも最新 状態で確認することができるようになった。
2. 正しい評価/優先度付けの実施
 評価/優先度付けはカンパニー内だけで行なわれ るのではなく、コーポレート全体としての最適 化・価値最大化が必要であると改めて確認された。 また、計画・導入・運用・保守・廃棄といったラ イフサイクルの視点でも行われる必要もあると認 識された(図4)。
この企業の場合、計画段階では“期待効果”、 “導入難易度”、“戦略的位置づけ”の3軸で評価し、 ポートフォリオミックスを検討することとした。

 各軸は、複数の定量・定性評価指標から構成され ている(例えば“期待効果”は、コスト削減効果、 売上げ向上効果、業務プロセス改善等)。これらを 元にITプロジェクト/投資の優先度を導いた。
 導入・保守段階では、3軸に更に、プロジェクト 導入状況(スケジュール・コスト・リスク・リタ ーン)の評価も加えることとした。いくら期待効 果が見込めるプロジェクトでも導入に問題があれ ば、ITプロジェクト/投資全体の価値を下げてしま う恐れが生じる。それを早期に発見し、多角的な 視点で打ち手を見出すために必要となってくる。
 運用段階でも、IT投資の“期待効果”、“戦略的 位置づけ”の2軸を常にウォッチすることとした。 当初計画通りの効果を上げているかをチェックす ると同時に、その投資が全社戦略/カンパニー戦略 と合致しているのか、廃棄や新たな代替のIT投資 を立ち上げる必要があるかの検討に求められるた めである。
 この企業では、Artemis 7のエグゼクティブ向け レポート機能とArtemis 7データベースからの独自 帳票作成により、短時間で必要なアウトプットを 用意できるため、月単位など、以前では考えられ ない頻度での評価の更新が可能になった。
3. 正しい資源配分の実施
 「正しい評価/優先度付け」が出来て初めて、 「正しい資源配分」が可能になる。
 この企業では、コーポレートIT部門主導で評価/ 優先度付けを行い、プロジェクトのGo-No goや 資源再配分の方向性のみを提示することとしてい る。コストや人的リソースの資源配分の最終決定 は、今のところある程度、各カンパニーの自由度 を許している。だが、結果的には、「正しい評価/ 優先度付け」による「正しい資源配分」を論理的 に提示しているので、各カンパニーはコーポレー トの提示に従う傾向にある。
4. プロジェクトマネジメントの質向上
 既に行われているプロジェクトマネージャの教育 だけではなく、コーポレート及び各カンパニーの IT企画部門の体制整備も進めた。PMOとしてITプ ロジェクト実施に必要なPMプロセスや運用体制の 定義を行った。また、このPMOがPMやPjPfM実 施の主体組織となった。
 更に、PMISを活用することで、シンプルで負荷 が少ない、PMからPjPfMまでシームレスなデータ 連携が可能となった。
 この企業の場合、PMの導入を先行させた。始め にPjPfM導入とした場合、「コーポレートがカンパ ニーの統制を強化する」とカンパニーが考え、反 発が少なくないと判断されたためである。まず、 PMの導入でプロジェクト推進そのものを効率化さ せることを明示し、PjPfMに必要な体制データ収 集等を整えることとした。そして、徐々にPjPfM の必要性を啓蒙し十分なコンセンサスを得た上で 導入することとした。

導入効果


 コーポレートIT部門といくつかの主要カンパニ ーのIT部門で既にIT-PMの運用が行われている。 また、IT-PjPfMもパイロット運用を経て本運用が 開始された。
 その結果、次のような導入効果が現れた。
1. 資源の有効配分により投資対効果アップ
 今回の取り組みで、ITプロジェクト/投資の戦略か ら執行までのマネジメントの仕組み、インフラが 整備された。
 その一番の効果は、「重複や無駄なITプロジェク トの排除」「価値の高いITプロジェクトへメリハリ のある投資」が可能になったことであろう。 実際この企業でも、ITプロジェクトの全体把握と 正しい評価/優先度付けから浮かび上がった十数% の重複や無駄なITプロジェクトにメスが入れられ ている(彼らは無駄の大きさに驚愕していた)。
2. 情報共有の活性化・意思決定の透明化
 Artemis 7によりITプロジェクト/投資の全ての 情報 -属性情報、セグメント情報、評価情報、 進捗データ、更にプロジェクト月報や添付資料、 等- が一元管理されることになり、アクセス権 限さえあれば、いつでも最新のプロジェクト情報 が確認できるようになった。全ての関係者間での バーチャルな場での情報共有が促進されたと同時 に、これが引き金にリアルな場での意思疎通も結 果として密になった。
 また、意思決定者が投資可否及び優先度付けを 行うために使用するアウトプットがArtemis 7上に 保存されているため、意思決定が何をどのように 判断したのか第三者が客観的に確認することがで きるようになった。
3. プロジェクト情報収集及び出力工数の削減
 ITプロジェクトの情報収集には、プロジェクト マネージャとIT企画担当中心に、これまで多大な 時間と労力がかけられていた。だが結局は不完全 でありタイムリーな情報を集めることができてい なかった。Artemis7の導入により、プロジェクト 情報が一元管理され、情報収集フローが整理され た。また、意思決定支援帳票の出力も簡便化され た。この企業の場合、年間数十人日の工数が削減 されたと見積もられている。
4. ITプロジェクト実施の円滑化
 PMO主導によるプロジェクトマネジメント支援 体制が整備され、各導入プロジェクトもうまく回 り始めている。また、今回の取り組みで、「必要の ないプロジェクトほど問題が多くそれらをやめ た」、「価値が高いプロジェクトに問題がある場合、 よりリソースをかける」ことが可能になったこと も円滑化に寄与している。

まとめ


 今回の取り組みは既に一定の成果を挙げ、これ らの結果は経営陣にも高く評価されている。全て のカンパニー及び海外事業所でもIT-PM及びITPjPfM を導入することが既に決定している。また、 関連子会社にもIT-PjPfMを今後展開する予定であ る。
とかく、この手の取り組みは概念的であり、掛け声だけか 一過性のもので終わりがちである。この企業は、ITマネジメントに 関わる全ての関係者が知恵を絞り、社内の葛藤を乗り越え、 継続的な実施まで見事落とし込むことが出来た。
 本事例は、グループ全体での「ITガバナンス」 展開までの道筋を創った格好の例と言えよう。

プロファイル


 日本を代表する電気機器メーカーのひとつ。海 外にも多くの製造・営業拠点を持つ。社員は数万 人。年間IT投資額も数千億円規模にのぼる。

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