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2008.08.07

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導入事例

プロジェクトマネージャ育成プログラム作成事例



仕組みやシステムだけではプロジェクトは動かない


 米国において、プロジェクトの成功要因のうち50%はプロジェクトマネージャの資 質であるという調査結果が出ている。当然のことながらその仕組みや組織基盤などの 企業環境とPMO(Project Management Office)の充実度等も重要な鍵となる が、残念ながらまだまだプロジェクトマネージャの良否がプロジェクトの成否を大き く左右することを示している。このことはプロジェクトマネジメント制を成功させる には、優秀なプロジェクトマネージャをどれだけ抱えているかが最も重要なことであ るかのように捉えられるが、現実にはプロジェクトマネージャの育成のみならず、そ の組織や仕組みの中でそれぞれのポジションを担う社員が、どのように活動しプロジ ェクトの推進に寄与していくかが最も重要である。ここでは、これらの問題をいかに 解決していったかを解説する。

導入背景


 多くの企業がプロジェクトマネジメント制を敷 きながらその成果を十分に出せずにいる。この企 業においても同様の状況が起こっていた。プロジ ェクトマネージャ制を導入して1年が経過したが、 目に見えた成果は現れず、それどころかむしろ周 囲からのプロジェクトマネージャに対する不満が どんどん強くなってきた。理想的な組織を作り、 良いシステムを導入したが、実際にプロジェクト をリードすべきプロジェクトマネージャの能力が 全くついてこなかったのである。プロジェクトマ ネージャを育成しようと考えたが、技術偏重の評 価で抜擢されたプロジェクトマネージャにどのよ うな教育をすべきか全くアイデアが無かった。そ こで原点に立ち返り、企業としてプロジェクトマ ネージャの業務内容と期待している発揮能力を明 確にし、それをもとにプロジェクトマネージャ育 成システムを構築して、教育を実施した。同時に プロジェクトマネジメント制を支える他のポジシ ョン(部門長等)の役割も明確にして社内徹底す ることでプロジェクトマネジメント制をより確固 たるものとした。

導入前の課題


 仕組みとしてプロジェクトマネジメント制を敷 き、プロジェクトマネジメントのシステム導入も 完了したが、プロジェクトマネジメント制を敷く 前より良くなったという実感が全くなかった。そ の原因を探った結果、この状態を脱するための課 題は下記の3つに絞られた。
1. プロジェクトマネージャの能力不足
 新たにプロジェクトマネージャというポジショ ンが設けられ、数名がアサインされたが、自分達 の役割について明確なイメージが無かった。また、 長い間技術力のみで企業貢献を考えてきたため、 マネジメント的なポジションに期待される能力を 身に付けていなかった。
2. プロジェクトマネジメント制における プロセスの不徹底
 プロジェクトマネジメント制が発足したが、プ ロジェクトマネージャの能力に不安を持つ各機能 組織の部門長が、本来の役割・権限を越えてプロ ジェクトに関与したため、プロジェクトマネジメ ントのプロセスが守られなかった。
3. プロジェクトマネジメント制を支える 人々の意識
 上記1.2.のような状況から、組織内にプロジ ェクトマネジメント制をうまく活用していこうと の意識がなかなか芽生えず、何のためのプロジェ クトマネジメント制なのかさえ認識されていなか った。

実施内容


 プロジェクトマネジメント制を支えるのは基本 的には人であり、仕組みやシステムはそれを支援 する基盤やツールにすぎない。人の意識を変革す るためには、まずその企業のプロジェクトマネー ジャ制における、各ポジション(プロジェクトマ ネージャ、部門長)の役割と権限、そしてそれぞ れに期待されている人物像を明確にすることが重 要である。既にプロジェクトマネジメント制を敷 いている企業においても、プロジェクトマネージ ャに、あるいはラインマネージャに何をどこまで 期待しているかを明確に言える企業は以外に少な い。プロジェクトマネージャ制はプロジェクトマ ネージャだけで推進できるものではないため、各 関連ポジションに対する期待レベルを明確にして、 それぞれへの徹底と育成を行って初めて企業とし ての推進が可能となる。そして最終的には、この 仕組みを支える人々の意識を改革していくことが 最も重要である。
 これらを踏まえ、この企業では下記のように改 革を行っていった。
1. プロジェクトマネージャ像の明確化
 名前だけプロジェクトマネージャと呼ばれてい ても、どこまで何を期待されているのか不明確だ ったプロジェクトマネージャの人物像を洗い出し た。この企業の場合、プロジェクトマネージャに 対しては単なるコーディネータ的な動きやいわゆ るマネジメント能力だけでなく、強いリーダシッ プを期待していることがはっきりした。
2. プロジェクトマネージャの具体的な必 要能力の洗い出し
 プロジェクトマネジメントプロセスをベースに それぞれのポイントでプロジェクトマネージャが どのような業務を実施していくべきかを具体的に 洗い出した。そして、それぞれの場面で活用しな ければならないスキルや行動特性にはどのような ものがあるかを明確にしていった。下記の例は、 プロジェクト発足時のキックオフミーティングに おいて、プロジェクトマネージャが行わなければ ならない業務にはどのようなものがあり、そのと き活用しなければならないスキルや行動特性には どのようなものがあるかを明確にしている。
3. プロジェクトマネージャの具体的な必 要能力の整理
 全てのプロセスにおけるプロジェクトマネージ ャの業務一覧を作成し、それぞれに必要とされる 発揮能力を洗い出して対応させた。また、抽出さ れたそれらの発揮能力を知識・スキル・行動特性 に分類して整理し、各個人のチェックシートを作 成した。さらに、このチェックシートの運用ルー ルを作成し、活用を開始した。
 同時並行的に、プロジェクトマネジメント制に 関わる全てのポジションの人々を集めてワークシ ョップを開催し、同様のことを行ってそれぞれに 期待される発揮能力と個人のチェックシートを作 成し、運用を開始した。
4. 人事評価とのリンク
 これらの仕組みを作成しても、単にプロジェク トマネジメント制の中だけで運用されていたので は、日々の人事管理と結びつかず、人事評価上の 作業と多くのことが重複するため、人事部門と共 同でこれらの内容をMBOと結びつけ、評価や登用 にも反映できるよう人事システムも改革した。

導入効果


 前途のことを、プロジェクトマネジメント制導 入の事務局や人事から一方的に行うのではなく、 社内の担当者を巻き込んで推進したことにより、 プロジェクトマネジメント制の目指す姿や、その 中での各自の役割が末端まで浸透し、意識改革も 達成された。その結果として、下記のような成果 が得られた。
1. プロジェクトマネージャに自覚が生ま れた
 それまで、何をどのように期待され、どこまで 実施すればよいのか分からず戸惑っていたプロジ ェクトマネージャにとって、実施すべきこととそ の場でどのように振舞うべきかが明確になり、自 らの目指す姿がはっきりした。プロジェクトマネ ージャはその目標に向かって自発的に学習を始め、 それらから習得される能力をどんどん発揮するよ うになり、どのような場面でもプロジェクトマネ ージャとして、自信を持った行動が取れるように なった。その結果、周囲からの信頼も厚くなり、 プロジェクトマネージャの決断を支援する動きが 出てきた。
2. 部門長がプロジェクトマネジメント制 に積極的になった
 プロジェクトマネジメント制が導入されたこと によって、現場から一歩引かざるをえないような 疎外感を持っていた部門長が、プロジェクトマネ ジメント制を根底で支えるのは自分達ラインであ るとの認識を高め、それまで消極的であったプロ ジェクトマネジメント制を受け入れるようになっ た。その結果、プロジェクトに提出される各部門 からの成果物やデータ等の質が上がり、プロジェ クト推進に大きく貢献するようになった。
3. 社内の意識改革ができた
 プロジェクトマネジメント制に関わる全ての部 門を対象にワークショップを行うことにより、そ れまで希薄であったプロジェクトマネジメント制 に対する認識が社内全体に行き渡り、プロジェク トマネジメント制が目指すスピード経営に対する 意識が芽生えた。結果として、常にプロジェクト の進行を第一と考える風土が定着し、プロジェク トの推進が容易になった。

まとめ


 プロジェクトマネジメント制は、それに関わる 人々が自ら作り出していく業務遂行のあり方であ り、単なる組織変更による仕組みの改革やシステ ム導入による業務の効率化ではない。一般的にプ ロジェクトマネジメント制の導入というと組織変 更とシステム導入で終わってしまい、最も重要で ある意識改革にまで発展せず、数年後には失敗に 終わるというケースが少なくない。意識改革を行 うにはいろいろなアプローチが存在するが、この 企業の場合は、各関係担当者の教育・育成という 観点から全社的に取り組み、社内の巻き込みに成 功している。このように、文化・風土の中にプロ ジェクトマネジメントの考え方が根付いてしまう と、たとえ上層部の人事異動のために組織変更が 行われたり、主要な担当者がいなくなるなどとい うことがあったとしても、プロジェクトマネジメ ントが目指す方向性は、その企業の中に脈々と受 け継がれ、結果を出しつづける。

プロファイル


 売上高上位10社に入る日本の製薬企業。昨今の 外資系企業の参入により、将来が見えなくなって きている。資本力に劣る日本企業ではあるが、プ ロジェクトマネジメント制を敷くことによって、 スピードで外資に対抗しようと考えている。R&D 部門だけで1,000人を超える人材を抱え、現在ま でも何度かプロジェクトマネジメント制に近いも のを採用したが、ことごとく失敗に終わっていた。

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