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横河電機株式会社 プロジェクトマネジメント教育事例   

 Artemis OnTrackを用いた集合教育の実践 
プロジェクトマネジメント(PM)能力向上には、実践と同時に、講習等による集合教育も重要
である。PMの講習と言っても様々な方法がある。例えば、自社の業務手順や仕事の進め方を徹底
させるための講習、他社の手法を知るための講習、米国のPMI(Project Management
Institute)に代表されるPMBOK®(Project Management Body Of Knowledge)等による
標準方式の講習、プロジェクト完了時に行う実践経験講習、失敗事例や成功事例に学ぶ事例講習等
である。
横河電機株式会社も様々な方法を試行する中で、PMの応用力向上という観点からアルテミスの
Artemis OnTrackを用いた集合教育を導入した。導入後約3年間、受講者から好評ということも
あり、現在も継続して実施されている。本稿では横河電機での取り組みを、講座の手法や受講者か
らのアンケート結果を交えて紹介する。 |
 導入背景  横河電機株式会社は、「計測と制御と情報」を技
術ドメインとしてビジネスを行っている。取扱い製
品は多岐にわたり、多品種少量生産の体制をとって
いる。製造ラインはNAPS生産方式という独自のカ
ンバン方式、1個流しを採用。近年では、激しさを
増す国際競争に勝ち残るため、海外に生産拠点を移
している。
また、プラント内に設置される流量計・圧力計な
どのフィールド機器より、近年販売量が増加してい
る制御機器類は、システムとして一括で発注される
事が多くなっており、システムに含まれるエンジニ
アリングやソフトウェアが増え、ソフトウェアを関
連会社に委託する量も増えている。
このような状況の中で、多くのステークホルダー
間を調整してハードとソフトを組合せ、顧客要求に
合った品質の高い商品にして必要な時期に提供する
というシステムインテグレーションは、ますます難
しく重要な任務になっている。ハードやソフトをい
くら安く作っても、お客様に満足していただける品
質でなければ後工数がかかり、かえって大きな損失
になる。優れたシステムインテグレーションをする
ための必要なスキルとしてプロジェクトマネジメン
ト能力があり、横河電機でもPM能力向上に取り組
んでいる。
 導入前の課題  横河電機では約20年前からプロジェクトエンジニ
アリング&プロジェクトマネジメント組織をつくり、
ノウハウの蓄積や仕事の定型化をすすめてきた。同
時に仕事を効率的に行うために、その手法について、
社内教育を通じて水平展開に努めてきた。しかし、そ
れだけでは専門的な深さはあっても応用範囲が狭く、
マネジメント手法の改革や新方式の導入は困難であ
る事が分かった。そのため、広く一般的な知見を社
外に求める試みを開始した。
その一環として、エンジニアリング振興協会
(ENAA)のプロジェクトマネジメント(PM)部会
で他社のやり方や事例を自社で活用する活動を始め
た。また、PMBOK®はグローバルスタンダードとし
て最適と考え、PM基礎教育講座として実施した。
しかし、この講座は「形式的で硬く、退屈、面白く
ない」との受講者からの評価も多かった。特に、
「ルールとして仕事はこのようにやらなければいけ
ない」という内容は、受講者が聞く前からうんざり
することが想像に難くない。PM教育の担当者は、
内容に事例を盛り込む、休憩を増やすなど、受講生
に刺激や興味を持たせ続ける事が出来るような工夫
を実施していたが、根本的な解決法として、もっと
楽しく勉強が出来るPM講習の題材や手法を模索し
ていた。
 実施内容  アルテミスのArtemis OnTrack
(図表-1、以下OnTrack)は、プロジェクトの計画から終結までを
体験する目的でつくられた参加型のシミュレータで
ある。アルテミスによる講座を横河電機のPM教育担
当者が体験受講したことがきっかけとなり、横河電
機内の主要メンバーへのデモを経て、関連会社を含
むPM応用社内教育として導入が決まった。
横河電機における本講座は、自社及び関連会社の
メンバーに対するPM応用講座と位置づけている。
講座の受講資格は、PMの実践経験があるか、また
はPM基礎講座を受講済みであることとしている。
PMの基本を知らない受講者の場合、受講後に「シ
ミュレータが面白かった」という印象しか残らない
危惧があるからである。この制約条件は基礎講座の
受講率を高める効果もあった。
実際にOnTrackによる講座を実施してみると、受
講生に刺激や興味を持たせ続けるための講師の努力
がほとんど必要ないことが判明した。2日間の講習
であるにもかかわらず、受講者自身が積極的に取組
み、最後まで緊張と笑いが絶えない講習となり、受
講者の評価や人気度は高い。この講座を2005年末ま
でに17回実施したが、いまだに人気は衰えていない。
OnTrack講座の実施スケジュールやその効果につ
いて、以下に紹介する(図表-2)。
1.イントロダクション
まず、PM基礎知識の要点をまとめた講義(座学)
を行う。この中で、シミュレータでも使用するクリ
ティカルパスを見つける演習も実施する。シミュレ
ーションの準備と、開始前の刺激と緊張を高めてい
る。
2.操作説明
受講者一人一人がPCを使える環境を整え、全員
がシミュレータ操作に慣れるようにする。シミュレ
ータの操作方法説明で機能の豊富さとおもしろさを
各自に体感してもらう。
3.グループ分け
1講座定員16名とし、4人毎に4つのグループに
分ける。グループメンバーは業務、部署、PM経験年
数等を考慮してバランス良く組み合わせるようにし
ている。グループ作業を通じ個々のプロジェクトの
進め方や考え方の違いを肌で感じ、メンバー同士が
お互いの理解が深まると考えているからである。そ
の結果、経験豊富なメンバーが経験の浅いメンバー
を指導しながら遂行している姿を見ることが出来た。
また、4人程度がグループとして最もまとまりが
良く、全員の参加意識が高く、他のグループとの競
争意識も働きやすいようである。実習開始前にはグ
ループ内で自己紹介を行い、一体感と連携意識を高
める工夫をしている。
4.シミュレーション実施
グループ内での役割分担を明確にしつつ、交代で
シミュレータ操作を行なってもらう。
5.レビュー
プロジェクトの中間点・終了時点のレビューが、
理解を深める上で重要である。グループ毎に自分達
のプロジェクト結果について発表してもらうのだ
が、講師はこの中で良かった点と反省すべき点を見
極め、改善提案や対処方法についてアドバイスする。
その際、プロジェクト遂行中に求められる各種の判
断に対して、標準的な解答だけではなく社内事例を
含めた身近な例に置き換えて説明することが、受講
者の理解度と納得度を高める効果がある。
 導入効果  横河電機では講座終了後にアンケートをとること
を必須としている(図表-3)。約200名に及ぶ受講者
のアンケート結果からもOnTrack講座を導入した教
育効果が高いと考えている。
実際のプロジェクトは期間も長く、何が良くて何
が悪いから現在の結果があるのかといった因果関係
がわからないままにプロジェクトが完了することが
非常に多い。そして、反省点や改善点を十分検証せ
ずに次のプロジェクトがまた始まるという繰り返し
に陥りやすい。OnTrackの教育効果が高い理由の一
つとして、「講座の中では短時間で一つのプロジェ
クトを完遂するため、行動と結果がすぐに目に見え
る」ということが挙げられる。アクションが悪けれ
ばすぐに悪い状況となり、また、適切な対応をすれ
ばリカバリーされると状態の変化がすぐに分かる。
また、この講座を通じて、「プロジェクトマネー
ジャーとしてどのような判断基準や価値観を持って
いるとプロジェクト全体のモチベーションが向上す
るのか」、「プロジェクトをうまく進めるにはどのよ
うな気配りが必要か」について短時間に体感が可能
と判断されている。
OnTrackによる講座は、最後まで緊張感と、グル
ープの自主的な「わいわいがやがや」とした議論の
盛り上がりにより、通常の座学の講習ではみられな
い受講生の「生き生き」とした姿が見られた。これ
らは、講師にとっても最もうれしい事であるといえ
よう。
 まとめ  横河電機では近年、海外の大型プロジェクト案件
が増えており、プロジェクトの中心も当社の海外拠
点にシフトしている。そのために、グローバル規模
でのプロジェクトマネジメント能力向上が必須とな
っている。当然、実践トレーニングだけでなく、グ
ローバル規模のプロジェクトマネジメント教育が必
要である。幸い、プロジェクトマネジメントは海外
で先行し、OnTrack だけでなく、米国PMI
(Project Management Institute)のPMBOK®
など海外版PM講座の教材が豊富である。
しかし、この教育を誰が実践するかという問題が
ある。PMの基礎知識はPM研修専門会社に委ねる
ことが出来るが、会社固有のPMのノウハウは、そ
の会社でしか伝承できない、その会社の実践経験者
しか伝えられないものもある。その為には、PM講
師は出来るだけ自社内で育成する事が望ましい。ト
レーニングを受講した現役PMには、業務で結果を出し
多くの経験を積み重ねていくことが求められるが、
それと同時に、社内講師として次世代PM育成も期
待されている。
 プロファイル  横河電機株式会社
■所在地
本 社:〒180-8750 東京都武蔵野市中町2-9-32
■主な事業内容・製品
・制御事業
生産制御システム
フィールド機器
生産支援ソリューション
・情報サービス事業
医療用画像情報システム
IPネットワークソリューション
・計測機器事業
半導体テスタ
測定器
・航機その他事業
航空・船舶用機器
脳磁計測システム
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