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2008.10.13

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株式会社名村造船所 生産管理システム導入事例



工数計画精度と負荷変動対応の向上によるボトルネックの解消


 石油ショック等に起因する過去2度にわたる造船不況後、日本の造船各社は、造船設備拡大の抑 制に努めつつ、経営努力による一層の合理化や技術革新を推進してきた。今後も国際競争力を維持 するためには、生産管理の充実を柱とした、さらなるコスト削減が必須となっている。
 このような状況において、株式会社名村造船所は早くから生産管理、生産計画への情報システム 導入に取り組み、工場内のボトルネックを把握し解決する手段を逐次講じていた。1991年からは Artemis 9000を中心としたシステムの導入を開始し、営業・設計・製造・調達を結ぶ生産システ ムを構築してきた。自社によるシステム開発・教育などを今日まで継続的に実施してきた結果、限 られた設備での生産能力を最大化できる体制となっている。
 本稿では、株式会社名村造船所における生産管理システム導入とその効果について紹介する。

導入背景


 名村造船所伊万里事業所は、十数万トンという巨 大な商船であるバルクキャリアーやオイルタンカー を主に生産し、1973年の事業所操業以来200隻を越 える製造実績を誇る国内有数の造船会社である。 名村造船所における生産管理、生産計画への取り 組みの歴史は古く、1974年の佐賀県伊万里市に竣工 された伊万里工場と歩みを同じにする。一体化した ブロック工場とドックをT字型に配置したコンパク トな工場の生産能力を最大にする為には、工場内の ボトルネックを突き止めその対策を講じる必要があ った。
 最初の取り組みとして、1974年に目標管理シス テム導入を目指した標準時間設定を開始した。造船 の場合、ロボットや機械による作業は少なく、作業 の大半は人によるものであるため、作業時間の算出 が非常に難しい。作業の標準時間の算出は、ストッ プウォッチを持って作業を細かに分析し、時間の単 位を計るところから始めた。こうして算出された標 準時間に物量を掛ける、標準時間算出システムは 1976年頃より稼動した。
 1980年には、KKD(勘、経験、度胸)から科学的 管理への脱却として、情報システム(メインフレー ム)による小日程生産計画作成を目指した、スケジ ューリングソフトウェアの選定、学習を開始した。し かしながら造船業は生産の形態が労働集約的であり、 「コンピュータで俺たちの仕事の計画なんかできるか」 と現場から非常に強い抵抗を受けた。生産管理シス テム構築を先導するチームは、現場に足繁く通い、科 学的管理の重要性を訴え続け、ついには現場の最高 責任者の協力を得て、1982年には情報システムによ る生産計画作成を開始した。翌1983年には情報シス テムによるスケジューリング結果に基づいた材料購 入や人の調達も開始した。これにより客観的に工程 を見ることができるようになり、工期の短縮、人員 の削減が実現された。

導入前の課題


 当時システムには、次の3点の問題点が指摘されていた。
 ■導入されていたシステムは、スケジューラー単 体であり、出力機能などは数百本のバッチファ イルを自社で作らねばならず、
 メンテナンス上問題があった。
 ■少数の担当者に対してデータの入出力、変更処 理に大変時間が掛かっていた。
 ■処理時間が長くかかるため、シミュレーション の実施回数を制限していたため、工程の精度に 問題があった。
 1990年に、顕在化している問題点の解決や入出力 の省力化、さらにはシステムの柔軟性を求め新生産 管理システムの構築を検討した結果、データベース を具備し、多様な出力が可能で、処理能力の高い Artemis 9000が最適との結論に至り、導入を決定 した。

実施内容


 1991年よりArtemis 9000の導入開発を開始し た。まず、翌年に、橋梁や鉄骨を扱う鉄構部門にお いて、経営に関わるような大日程を扱うシステムと、 現場の小さな1つ1つのアクティビティ(例えば、「ボ ール盤で穴を開ける」)迄を管理するシステムの2つ を構築し、運用を開始した。以降、船殻部門(切断後 ~ブロック搭載迄)、設計部門、艤装部門(ブロック 搭載~引き渡し)の順に導入を拡大した。
1.生産システムにおけるArtemis 9000の役割
 名村造船所の生産管理システムの概要と、Artemis 9000で構築したシステム(以降アルテミスシステム) の範囲を、流れに沿って説明する。(図表-1)
 まず営業からの引合情報を元に、切断開始やブロ ック搭載の開始、進水や試運転の時期といった主要 項目日程が別システム(総合線表)によって作成さ れる。
 アルテミスシステムはこれを取り込み、「製造」 つまり工程や要員、場所の計画を行う。造船の場合、 船体の外面が1隻1隻違った曲面となっているため、 組み立てる際には下から支えて立てて行わなければ ならず、物理的に様々な制約がある。また規模と重 量故に建造途中のブロックを一時的に保管するにも 様々な制約がある。そのため保管場所決定のスケジ ューリングは必須となっている。また、定盤割付を 最適化するためにシミュレーションを繰り返すこと も特徴的である。現場の作業は天候に左右され、悪 天候が続く場合などは大幅なスケジュール変更が発 生してしまう。そのため、週間計画は現場にて作成 させるようにし、現状との乖離を起こさないシステ ムとしている。
 設計部門に対しては、現場の工程進捗状況を逐次 連絡し、アルテミスシステムからは図面提出の期限 のみを指示するようにし、調達部門に対しては納期 情報をアルテミスシステムから調達システムに渡し ている。以上が名村造船所生産計画システムの大ま かな全容である。
2.Artemis 9000を用いたシステム運用
 Artemis 9000によるシステム開発は、当初から 名村造船所計画管理室社員自身で行われ、必要に応 じてアルテミス社のサポートを受けながら逐次必要 な改善を行っている。現在のArtemis 9000システ ム担当要員は5名、生産計画専門職としてユーザー用 件のまとめからシステム開発、教育まで行っている。 導入当初、メインフレーム版Artemis 9000で構 築されたシステムは、PC版にダウンサイジングされ、 より高いパフォーマンスを得られるようになった。 また、2003年にはArtemis 9000トランザクション 機能を利用した工数管理システムを導入し、下記の 帳票を出力させるに至っている(図表-2)。
 ■リソース別工程表(単一リソース、複数リソース)
 ■定盤山積み表
 ■要員山積み表(単一リソース、複数リソース)
 ■時数管理表(単一リソース、複数リソース)
 ■調達関連情報

導入効果


 新生産管理システム導入による効果は多岐にわたる。
 まず、工程計画の精度が向上した結果としては、 次の5点が実現した。
 ■中小工程の不整合が解消された
 ■定盤割付、搭載日程の整合性が取れるようになった
 ■進捗をフィードバックした再計画が短時間で可能となった
 ■作業指示の発行が可能となった
 ■工程マスターを用いた工程計画作成により精度が向上した
 また、資源山積みによる負荷変動への対応の向上の結果、次の3点が実現した。  ■中小日程の山積みが可能となった
 ■協力企業への的確な作業割付が可能となった
 ■定盤の制約を考慮した計画が可能となった
 システム面での効果としては、当初の導入目的で あった処理時間の短縮や入出力処理の簡略化のみな らず、Artemis 9000の柔軟な言語構造により、シ ステム改修リードタイムの短縮やシステムメンテナ ンスコストの削減が実現したことも挙げられる。  また、専任のシステム担当要員をおく体制を継続 している事により以下の効果が認められることとな った。  ■生産管理ノウハウの蓄積
 ■工程管理技術の向上
 ■生産管理システム構築技術の向上
 ■高品質なサポートの提供

まとめ


 造船業界も他の業界と変わらず、絶えず変化をし ている。そのような中で生産能力を最大に維持して ゆくには、設備、工程計画(生産計画)精度、組織を 柔軟に活用しなければならない。
 これらをシステム面から支えていくために、各部 門間のシステム連携の強化、実績収集機能の充実と これらとの連携による現状把握と評価機能、そして、 管理者の教育・育成と一元化された管理サイクルの 確立といった課題にも今後積極的に対応していく必 要があろう。

プロファイル


株式会社 名村造船所
■所在地
 本社:〒550-0012
 大阪市西区立売堀2丁目1番9
 伊万里事業所:〒848-0121
 佐賀県伊万里市黒川町塩屋5番地1
■代表者
 取締役社長  名村 建彦
■主な事業内容・製品
 ・船舶の製造(タンカー、バルクキャリアー、コンテナ船、自動車運搬船等)
 ・船舶の修繕、橋梁の設計・製造・架設
 ・水門の設計・製造・架設
 ・各種鉄構造物の設計・製造・架設
 ・環境機器(焼却炉)の設計・製造・据付

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