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2008.10.13

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導入事例

田辺製薬株式会社(現・田辺三菱製薬株式会社) 製品開発管理システム導入事例



プロジェクトマネジメントの新事例
効率的な運用を支援するITシステムの導入


 医療用医薬品の開発は、医薬品の候補となる化合物に対して様々な試験を行い、その特性や効能・ 効果を明らかにし、その結果が厚生労働省に承認されて初めて市場に出ることになる。それまでに 要する期間は9~17年、投資額は数百億円という膨大なものである。更に、着目した化合物が市場 に出る確率は、一般的には1万分の1以下と言われており、ハイリスク・ハイリターンの研究開発の 典型であると言える。
 このようなプロジェクトを複数推進する組織にとって重要となるのは、個々のプロジェクトに要 する期間とコストを削減するとともに、中止すべきプロジェクトをできる限り早く止めることであ る。そしていずれにも共通するのが、プロジェクト状況の可視化の重要性である。
 個々のプロジェクトにおける課題・問題点を早期に発見し、早期に対応することにより効率的・ 効果的にプロジェクトを推進するためにはプロジェクトのスケジュール、リソース、コスト、リス クの情報が可視化できることが不可欠である。また複数のプロジェクト状況を比較し、中止判断を 含めた選択と集中を行うためにも、意思決定者や意思決定機関が、プロジェクト状況を必要とする 時に必要な形で入手できることが重要である。
 これらを実現するためにはITインフラの構築が必要不可欠ではあるが、マネジメントの目的を達 成すると同時に、過度の運用負荷にならない形での実装が重要である。 以下では、田辺製薬株式会社におけるプロジェクトマネジメントシステム導入の中でのこれらの 取り組み事例について解説する。

導入背景


 国内製薬企業だけでなく、グローバルメガファー マと呼ばれる外国資本の巨大企業においても、新薬 を市場に出すことが難しくなってきている。その中 で、田辺製薬は研究開発型国際企業としての地位を 確固たるものとするために、開発本部長の号令の下、 プロジェクトマネジメント体制を導入・強化する取 り組みを進めていた。
 開発期間を短縮し、かつ、開発経費の最適化と製 品価値の向上を図ることを目指し、1年間かけて解 決すべき課題の抽出を行い、対応策を策定し、実施 してきた。具体的には①プロジェクトチームの再定 義、②プロジェクトマネジメント体制に即した意思 決定構造の再定義、③開発プロセスの整備、即ち、 プロジェクトで実施する作業(試験、タスク)の洗 い出し、必要期間、必要なスキルと要員数、順序関 係まで定義した標準的な開発手順の構築が行なわれ ていた。
 そして、これらの仕組みを実際に活用し、当初の 目的を達成するためには、スケジュール管理中心の 簡単なツールではなく、リソース・コスト・リスク などの情報も含めて総合的な判断が可能となる、統 合プロジェクトマネジメントシステムが不可欠であ ると認識されていた。また、早期に効果をあげるた めには、システムの稼動開始時期を早めることが重 要という認識の下、パッケージソフトウェアを利用 するという判断がなされた。つまり自社のプロジェ クトマネジメント、プロジェクトポートフォリオマ ネジメントのための機能を、自社で開発することは、 融通が利く一方で、構築完了、稼動開始までに時間 がかかると考え、その代わりに一般的なプロジェク トマネジメント、さらにはプロジェクトポートフォ リオマネジメントを行うために必要な機能をはじめ から一通り備えているパッケージソフトウェアを核 としてシステムを構築することとしたのである。

プロジェクトマネジメントシステム導入にあたっての条件


 プロジェクトに関する情報を一元管理し、必要な ときに必要な形で必要な情報を参照できる仕組みを 構築することが最大の目的である。それに加え、情 報を入力する現場の負荷を少しでも軽くすることが 求められており、情報を入力するための手間とマネ ジメントの効果がバランスすることが重要であっ た。

期待効果


開発プロセスの標準化と継続的な改善
■テンプレートを計画の雛型としてシステムに実 装することで効率的な計画立案ができる
■標準化によって、「漏れ」と「無駄」が防止でき る他のプロジェクトの状況を見ながら、スケジ ュール調整ができる
スケジュール、リソース、コストの総合的な管理
■単一試験~全品目の進捗、コスト、リソース負 荷がリアルタイムに照会できる
■リソース稼動(負荷)状況の把握と予測精度が 高まり、人員配置計画が容易になる
■統一された指標(マイルストン)を用いること で、進捗評価が容易・正確になる
■トレードオフ関係にあるプロジェクト要素のコ ントロールが容易になる(依存関係の解決、関 連データの更新)
■資料作成のための業務負荷・重複作業が軽減で きる
プロジェクトの速度・成果の定量的な分析と、データに基づいたプロジェクトのパフォーマンス改善
■実測データによる定量的なプロジェクトのパフ ォーマンス分析が容易になる
■データの蓄積と評価の繰り返しによって、「標準」 の精度が高まる
■個人の経験とノウハウを組織で共有し、次のプ ロジェクトに継承できる

実施内容


 プロジェクトマネジメント体制の運用が開始され る中で、少しでも早くシステム導入の効果を挙げる とともに、システムを全体として最適な形で実装す るために、システム導入・展開を二つのステップに 分けて実施した(図表-1)。
第一次システム(2005年5月稼動:プロジェクトメ ンバー対象)
■プロジェクト計画の作成・追加・修正・照会機 能の実装
■WBSテンプレートの実装
■進捗照会、スピード評価データ収集
■リスクの共有・管理機能
第二次(2005年11月稼動:開発本部全員に展開)
■個人別実績時間情報の収集
■コスト管理機能
■リソース管理機能
■会計システムとのシステム連携(リソース、コスト)
第一次システム実施内容
1-1.ゴールイメージの共有
 第一次、第二次を通して最終的にシステムをどの ように利用することを目指すのか、その具体的イメ ージを共有することを最初に行った。仕組みの導入、 システムの導入に共通して言えるが、何を達成した いのか、そのために何をしなければならないのかを 明確にしてから開始することが非常に重要である。 導入の途中で課題・問題が持ち上がった際に、どの ように解決すべきか、その軸足がブレないようにす るためである。
1-2.WBSテンプレートの検討
 プロジェクト情報を効率的に収集・格納・公開す ることを目的に、WBSテンプレートの階層構造の 検討を行った。タイム、リソース、コストに関する 情報をどのような形、粒度で収集するのか、そのた めにはどのような形でWBSを構築するのが良いの かを検討し、WBSの階層構造を決定し、テンプレ ートとした(図表-2)。
1-3.タイムマネジメント要件の実装
 プロジェクト全体の進捗状況を把握するための主 要マイルストンのシステムへの実装と、個別プロジ ェクトの詳細な進捗状況を把握するためのタスクス ケジュール立案、進捗把握を行うための情報の登 録・参照方法を決定した。
1-4.リスクマネジメント要件の実装
 プロジェクトのリスクをプロジェクト内外で共有 するための情報の登録・参照方法を決定した。
1-5.システム運用プロセスの策定
 タイムマネジメントを、システムを利用して運用 するにあたり、「いつ」「誰が」「何を」行うのかを 明確化したシステム運用プロセスを策定した。
1-6.タイムマネジメント展開
 上記1-1.から1-5.の検討結果をプロジェクトメン バーに展開するために、関連ドキュメントを整備し、 運用ルールおよびシステム操作方法に関する教育を 実施した。
第二次システム実施内容
2-1.第一次システム導入の振り返り
 第二次実施に先立ち、これまでの推進方法の良か った点、悪かった点を振り返り、より効率的なシス テム導入を行うためのインプットとした。
2-2.リソースマネジメント要件の実装
 組織内で利用可能な人的リソース量、プロジェク トからの要求量、実際に費やした時間の3種類の情 報を登録・参照する方法を決定した。この内、実際 に費やした時間の把握は、当初は詳細なタスクレベ ルで行うことを想定していたが、例えシステムを用 いたとしても、情報を登録するための負荷が非常に 高くなることが明らかとなった。よって実運用に耐 えられるレベルまで情報の詳細度を粗くすることと した(図表-3)。
2-3.コストマネジメント要件の実装
 プロジェクト軸での予算情報を登録・参照する方 法を決定するとともに、会計システムとの間のイン タフェース機能を開発した。また予算情報をいった んMicrosoft Excelで作成し、内容が固まった後に プロジェクトマネジメントシステムに登録するため の自動化ツールを開発した。これは、予算情報は内 容の確定までに試行錯誤が繰り返されることを考慮 したためである。
2-4.レポート作成の自動化
 プロジェクト情報を、リアルタイムで定型のレポ ートに自動出力する機能を開発した。どれだけ情報 を集めても有効に活用しなければ意味がなく、必要 なときに必要な形で情報を参照するためには、レポ ーティングの自動化は必須であると言える。
2-5.システム運用サポート体制の整備
 システム利用対象者が開発本部全体で数百名に上 ることから、システム運用開始当初には、利用者か ら多くの疑問・質問が寄せられることが想定され た。そこで利用者からの問い合わせに即時に対応す るための、システム運用全般をサポートする体制を 整えることとし、PMO(プロジェクトマネジメン トオフィス)がその任にあたることとなった。
2-6.開発本部全体への展開
 前項の運用支援チームが主体となり、開発本部全 体にシステム運用を展開するためのドキュメントの 整備とそれに続く教育を実施した。

まとめ


 システム導入は、当初の予定通りに本格運用を開 始することができた。振り返って導入のポイントを 挙げてみると、以下の三点が特に重要な要因であっ たと思われる。
1.強力なトップダウンによる推進
 開発部門のトップである開発本部長自身がプロジ ェクトマネジメント体制とそれを支援するシステム の必要性を強く認識しており、またそれを本部内に 対して常に啓蒙していたことにより、開発本部の全 員が一丸となって導入に取り組むことができた。
2.現場との連携
 開発本部内の各部署から、開発プロジェクトを実 施する現場においてキーとなっているメンバーを導 入チームに迎えた。彼らは自分たちにとって使いや すいシステムにするために多くの有益なアドバイス を与えてくれるとともに、導入チームの検討結果を 早い段階から各部門に周知する役割を担ってくれた (図表-4)。
3.システム運用サポートチームの存在
 システム運用を開始するにあたり、PMOを、シ ステム運用全般をサポートするチームとして位置付 け、システム導入研修から利用開始後のフォローま でを一貫して担当した。これにより、利用者からの 疑問・質問がシステムの操作方法であるのか、ある いはシステムをどのように使うのかという業務にか かわるものであるのかを問わず、ひとつの窓口で対 応することができ、運用開始当初の混乱を最小限に 留めることができた。
このような取り組みにより、プロジェクトマネジ メント体制およびシステムの導入を円滑に進めるこ とができた。しかしながら、現在はあくまでも導入 が完了したところであり、目的達成のための手段と しての仕組みを構築することができたに過ぎない。 今後この仕組みを運用し、新薬開発能力を向上させ て行くことが重要であり、そのためには現状に満足 せず、仕組み自体も継続的に改善する必要があろう。

プロファイル


田辺製薬株式会社

■所在地
本社
〒541-8505
大阪市中央区道修町3丁目2番10号
東京事業所
〒102-8355
東京都千代田区三番町26番地
■代表者
代表取締役社長兼社長執行役員
葉山夏樹
■主な事業内容
・医療用医薬品事業
医療用医薬品の開発・販売
・ヘルスケア事業
一般用医薬品や医薬部外品の開発・販売
・ファインケミカル事業
ファインケミカル関連製品および食品メーカー向け製品の製造・販売

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